中古一戸建て購入×リノベーションの基礎知識
近年、人気が高まっている「中古一戸建て購入×リノベーション」を成功させるための最初のステップが「物件選び」です。マンションであれば、ある程度規格が決まっていますが、一戸建てとなると100軒の物件があれば100通りの仕様があります。物件によってバラつきの多い中古物件を購入するとき、一体どんな点に着目すればいいのでしょうか? こちらでは、リノベーションを前提とした中古一戸建て選びのポイントを解説していきます。
土地についてのチェックポイント
中古一戸建てを購入するとき、建物の状態ばかりに目が行きがちですが、土地をチェックすることも忘れてはいけません。土地の大きなチェックポイントとしては、「方角」と「地盤」が挙げられます。
01 南向きがいいって本当!?
土地が、東西南北どの方向で道路に面しているかを「道路付け」と言います。この道路付けにフォーカスして、土地の良し悪しを見ていきましょう。
南側が道路に面している場合
一般的に、南側が道路に面している土地は日照を確保しやすいため理想的だとされています。日当たり以外でも、道路に面しているほうにリビング・ダイニングを配置するため、建物全体の見映えが良くなるのが特徴です。しかしながら、駐車場や玄関も道路側に設けるために、リビング・ダイニングのスペースが狭くなってしまうリスクもあります。また、土地の広さや形状によっては、希望どおりの間取りを実現できないこともあります。
北側が道路に面している場合
一般的に、リビング・ダイニングを道路に面していない側に配置するため、道路からの視線をカットでき、プライバシーを確保できます。また、土地のスペースにゆとりがあって南側に庭を設けることができれば、ある程度の日当たりを確保できます。ただし、土地の南側にすぐ隣の建物がある場合は、日照が遮られてしまいます。また、道路に面しているほうにお風呂やトイレなどを配置することが多いため、道路からの見映えはあまり良くありません。
東側・西側が道路に面している場合
東側もしくは西側が道路に面している場合は、南側道路・北側道路の場合に比べると、プランニングに柔軟性を持たせられます。例えば、道路から玄関までの間にアプローチを設けやすかったり、駐車場を設けやすかったりします。デメリットとしては、土地のすぐ南側に隣の建物がある場合は、日当たりが悪くなってしまうことです。また、多くの場合、建物の北側に水回りや階段を配置して廊下を長くするため、居室スペースが狭くなりがちで、生活動線も長くなる傾向にあります。
02 地盤は大丈夫!?
中古一戸建てを購入するとき、地盤の強度を確認するのは必須です。例えば昔、沼地・水田だったような土地や、低地や斜面を造成して作った土地などは要注意です。地震が起きたときに傾いてしまうリスクや、大雨が降ったときの水はけが悪いというリスクが考えられます。前もって土地の傾斜や土質などの地盤調査をしておくことは欠かせませんし、調査結果によっては地盤補強が必要になるケースもあります。
建物についてのチェックポイント
「中古一戸建て購入×リノベーション」の最大の利点は、コストを抑えながらオリジナルのマイホームが手に入ることです。この「コストメリット」を生かすためには、ある程度、築年数の古い建物を選んだほうが有利になります。ここで重要なのは、「古くても状態の良い物件」を選ぶことです。あまりに状態の悪い物件を選んでしまうと、補修費用が高額になり、結果として高くついてしまいます。
01 内外装がきれいならOK!?
中古一戸建てを選ぶとき、「内外装がきれいだから大丈夫」と考えてはいけません。なぜなら、売却に出す際はある程度、内外装をきれいにするのは当然のことだからです。目を向けるべき点は、「表には見えない部分」です。
例えば、表面的にはきれいでも、水回りの土台や柱などが腐食していてシロアリが発生している物件も存在します。外壁や屋根に目立った傷みがなくても、内部に水がしみ込んでいて、構造体が腐食している物件もあります。表面的な汚れと違い、構造部分に関わる補修は費用がかさみますし、建物の寿命にも影響してくるので、しっかりチェックしなければいけません。
【アドバイス】
表に見えない部分のチェック方法として重要なのは、費用は掛かりますが、ホームインスベクター(住宅診断士)などの専門家の目を使うことをお勧めします。然るべき時期に然るべき補修をしているかどうかで、リノベーションの内容は変わってきます。
住宅としての機能を保ち続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。適切なメンテナンスがなされていない住宅は、雨漏り・腐食やシロアリなどの隠れたトラブルが潜んでいる可能性があり、その補修に多額の費用を要するリスクがあります。一つの目安にしていただきたいのが、「築10年」のタイミング。この時期に屋根や外壁、床下など、構造部分のメンテナンスをしていない物件は疑ってかかったほうがいいでしょう。
02 物件購入とリノベーションは同じ業者がいい!?
住宅の建て方・作り方は施工業者によって様々で、詳しく調査してみないとどんな工法・技術で建てられたのか分からないケースもあります。リノベーションは、多かれ少なかれ既存建物の構造・設備によって制約を受けます。この制約が多いと、「壁を移動できない」「窓を大きくできない」など、思い描いていたデザイン・間取りが実現できない場合もあります。
【アドバイス】
「思い通りの間取り・デザインにできなかった・・・」という失敗が起こりやすいのが、物件探しは不動産会社に任せ、購入後のリノベーションは建築業者に任せるパターンです。購入後に、「この物件ではご希望のリノベーションはできません」と言われてしまうことも少なくないようです。理想どおりのリノベーションを実現するためには、物件探しとリノベーションを同じ業者に任せることが大前提になると言えるでしょう。
物件探しもリノベーションも一貫して行っている業者であれば、お客様の要望を実現できないことを物件のせいにすることはできません。お客様の要望をしっかり把握して、それを叶えるために構造上・設備上・法規上の問題がないかチェックしたうえで物件を提案するため、このようなトラブルは回避できます。また、一定の工事を要する場合でも、事前に予算内で収まるかどうかを判断してくれるため安心です。
木造軸組工法 | 比較的、自由度の高いリノベーションができる。 |
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鉄骨のプレハブ工法 | 間取り変更など、ある程度自由にリノベーションできる。 |
木・コンクリートのプレハブ工法 | 間取り変更を伴うリノベーションはできないことが多い。 |
2×4工法 | 間取り変更を伴うリノベーションは難しく、内外装のリノベーションに留まる。 |
03 住みはじめてから気付くトラブルを避ける!?
住宅としての基本性能に目を向けないと、住みはじめてから様々なトラブルに遭遇することになります。実際に住んでみたら、「夏は蒸し暑く、冬はとても寒く、結露もひどくて、カビまで生えてきた!」といったケースもあるのです。特に、築年数が古い家は、断熱性能などに問題があることが多いので要注意です。
【アドバイス】
断熱性能や換気性能、耐震性能など、住宅の基本的な性能をしっかりと確認したうえで、問題がある箇所をリカバーするための工事費用を踏まえて予算計画を立てることが大切です。
築年数に関しては、基準にしていただきたい「年」が3つあります。それが、「1981年」「1998年」「2003年」です。これは、1981年に耐震基準が変わり、1998年に省エネ性能基準が変更され、2003年に24時間換気システムの設置が義務付けられたからです。つまり、3つの年より古くに建築された住宅は、各性能が劣っている可能性があるということです。
また、築年数に関わらず注意したいのが、その住まいが「どんな使われ方をしてきたのか?」ということです。例えば、長い間、無人だった家は換気がされていないため、築年数以上に劣化が進んでいるおそれがあります。換気をはじめとするメンテナンスがされていない住宅は、結露やカビが発生しやすく、その分傷みも早く進む傾向にあります。「築浅物件だから安心」と思っていても、予想以上に補修費用がかかってしまうことがあるのです。中古一戸建ての購入前には、その住まいが「どんな使われ方をしてきたのか?」をチェックすることが大切です。